目次

過労うつ

images

昨年、東大卒のエリート新入社員が過労自殺で亡くなった事件で、天下の電通に捜査の手が入り、数々の処分を受けたことは記憶に新しい。

その後の働き方改革に繋がることになる、意義の深い事件であり、また被害女性の事を思うと、痛ましい事件である。

同じくうつ病で苦しんだ者として、この事件は衝撃的だった。

過労死はこの事件は特に、マーケティングと言う業務を担っている筆者としては、身近な会社であることから、特に印象に残ってしまった。

とにかく、彼女の尊い命を我々は教訓にしなければならないと考える。

それは、普段の仕事の中での後輩や部下、取引先への配慮と言う形が一番自然では無いだろうか。

「何故過労自殺が起こるのか、防げないのか」

と言う視点から、同じような症状を起こした筆者が何か役に立てば良いと考えた。

精神科医師や臨床心理士などのアカデミックな立場ではない、

うつ病発症者の意見として聞いて欲しい。

 



電通事件の概略

女手一人で育ててくれた母親のために大企業の社員を目指して東大に合格、

広告業界最大手(ちなみに世界最大クラス)の電通に入社。

試用期間中から忙しい毎日。

本採用になってからの残業時間は130時間になるときもあった。

時間だけでなく上司からのパワハラもあったようで、身だしなみのこと、

企画書のこと、勤務態度の事について厳しく叱咤されていた。
彼女が残したメモから出てくる言葉は

「生きている意味がわからない」

「次の日が怖くて眠れない」

「死んだ方が幸せなのではないか」

このように常に死を意識していた。

2015年のクリスマス、母に最後の電話をかけてから、

自身の社員寮から投身自殺によってこの世を去る

症状はうつ病そのもの

彼女が残したメモを見ると、筆者がうつ病を発したときとそっくりなのだ。

まず眠れなくなる

生きていても意味がないと感じる

月曜日が怖くなる←憂鬱と言うレベルを越えている

何を見ても死ぬことを考えてしまう

私が体験したうつ病の症状そのものだと感じた。

明らかにうつ病だった彼女。

よくコメントやニュースで「何故辞められなかったのか」「私なら逃げる」などとあるが、

実際うつ病になると思考がストップするので身を守る事ができなくなるのだ。
逃げると言う発想ができなくなる。

総労働時間の問題

cloudy-sky-1376239377cOW

 

私はパワハラと過労でたった入社3ヶ月でうつ病になった。

しかし彼女ほどは残業していない。

せいぜい60~70時間程度。
過労うつになるには様々な要素があると考える。

単に残業時間の大小だけではないが、結局は時間の無さに起因する。だから今政府は働き方改革を推進する形を取っている。

自殺した女性社員は休日も仕事を持ち帰っていた。

勤怠上は休日となっていても、彼女は仕事をしていた。

常に交感神経のスイッチが入った状態であったと推測される。

彼女はそれこそ、リラックスしている時間がほとんど無かったのだろう。

筆者がうつ病を起こした当初の生活は、郊外に住んでいて会社までの90分は満員電車に押し込まれている状態だった。朝6:00起き、8:30に出社、22:00に退社して帰宅は23:30。

シャドーワークと言われる通勤時間を加えると7:00~23:30まで仕事をしていたことになる。
時間がなくなると睡眠時間が減る。

いや、6時間は眠れるだろ?とお考えのかたはいないと思うが、

ストレスフルな状態で帰宅後バタっと眠っても心の疲れは取れない。

それをやると無意識時間以外は全て労働時間になる。

これでは過去にいた奴隷よりも、収監されている犯罪者よりも酷い勤務を強いられていることになる。

 

職種の問題

過労自殺の中でも特に所謂「ホワイトカラー」の仕事の方が比較的過労死の率が高いのは、

考える仕事は死ぬ直前まで耐えられてしまうから。

私もマーケターのはしくれだが、企画と言うのは机の上でかじりついて出てくるものでは無い。

生活の様々な体験がインプットとなって発生するものである。

彼女の企画を上司が叱咤したと言うが、マイナス効果。

bullying-and-harassment

ただでさえインプットが少ない新入社員、しかも時間が無い中でどうやって良い企画を考えるのか?

脳科学が全くわかっていない、気合いだけの上司。

とにかく考えて産み出す仕事は楽しいのですが、とてもエネルギーを使う。

もっともカロリーを使うのは脳。

その脳をきちんと休ませてあげられなかったから私はうつになった。

そのようなエネルギーを大量に使う仕事ですから、会社は詰め込ませてはならない。

「普通の会社の」営業のようにある程度緩急をつけられる仕事ではない、内勤中心の企画や研究部門は特に気を使わなければならない。

 

何故現代になって過労うつが増えたのか

うつ病の労災認定はグラフのように年々増加している。

images-1

様々な仮説があるなかで、まず「脳の酷使レベルの増加」について考えたいと思う。

労働時間だけの問題ならば、もっと昔から過労自殺は増えていたはず。

私は過去商品企画開発だけでなく、CM制作や買付の仕事も兼務していたことがある。

その頃は色々な広告代理店と仕事をしていた。

CM制作中、撮影現場にてある代理店の年配の方が仰っていたこと。

「昔は1日で撮影が終わるなんてなかなか無かった。今はCGがあるが、昔は砂ぼこりひとつ発たせるのにも色々な道具を使って表現した。もちろん徹夜でね」

そう。

今のようにあらゆる面でITが無かった頃は、もっと非効率で時間のかかる仕事をしていた。

特に代理店は日常的に徹夜が当たり前。

いや、代理店だけでなく日本全体が週休1日。

総労働時間も今よりずっと長かった。

それでも今よりずっとうつや過労自殺が少なかった。

何故現代では年にいくつもの事件が起こるのか。

時間ではなく、密度

mark-516277_640

極端な話、窓際でぼーっとしていているだけでも、5人分のパートを独りで抱えながら息つく間もなく仕事をする人も、同じ労働時間としてカウントされる。

今も政府の早帰りキャンペーンに対し、様々な有識者が「労働時間の問題だけではない」と語りますが、その通りだろうと思う。

仕事の「密度」が圧倒的に変わってしまった。

誰でも場所を選ばずに複雑な計算や画像処理が出来るPCが普及したことで、時間あたりに処理しなければならない、考えなくてはならない仕事が増えてしまった。

データだけではない。

グローバル化で競争相手との戦いが複雑になった。

製品サービスが飽和状態で、スピードや質の要求レベルが極端に上がった。

単純な作業の多くは中国をはじめとしたアジア圏に移った。

生活も変わった。あらゆるところに情報が溢れている。圧倒的に脳を使うシーンが増えていると言ってよい。

脳を使いすぎると

human_brain_picture_165499

密度が増えるとどこに負担がかかるか?

それは業務をこなす個人の脳に負担がかかる。

1でもお伝えしたように、人間の機能の中で最もカロリーを使うのは脳。

いくら脳を使ったって死なないなんて嘘だ。

無理使いをすることで肉体的にも精神的にも大きな負担となる。

ストレスは健康を害すると言うのは諸君のご存じの通り。

動脈硬化をはじめとした脳疾患や心疾患の明らかな要因となる。

筋肉や臓器、生殖機能と同じように使わなければ退化するし、使いすぎれば破壊されてしまう。

過労うつ方程式

過労死が仕事密度に起因するならば、他の欧米諸国などで頻発しないのは何故か?

何故日本で頻発するのか?

これは恐らく、以下のような方程式が成り立つからでは無いだろうか?

総労働時間×仕事密度×気質(責任感など)や組織風土=過労うつ
電通の高橋さんの場合、総労働時間や組織風土は公情報の通り。

最大手企業の広告担当となれば密度は想像できる。

気質は何とも言えないが、恐らく真面目な方だったろうと想像出来る。

上記の方程式が成り立つ会社、業種、職種は日本国内に沢山存在す?。

いつ誰が過労で命を落とすか、わからないと言える。

本当の豊かさを得るには

日本は資源の少ない国。農畜産力も人手不足で劣っている。

だからグローバルな競争力を持たなければならない。

氷河期と言われた中で始まった私のサラリーマン人生。

世の中はずっと失われた20年を追いかけ続けたプレッシャーだらけ。

だが激務やプレッシャーだけではむしろ怪我人を増やして国内全体の効率が落ちる。

それにようやく気づいた政府は何より休養重視にシフトした。

がむしゃらに働くことが美徳だったあの頃は完全に過去のものになる。

もっと想像力、創造力が求められる時代が来るはず。

これらの力をつけるには仕事ばかりしていてはダメで、生活を豊かにしなければならない。

あなたの部下、後輩、得意先へ精神論を持ちかけてはいないか?

自分の武勇伝を背景に無理をさせていないか?人だって機械だって使いすぎれば壊れる。壊した機械は弁償すればいいが

人間は弁償出来ない。

現代人が働くと言う行為を見直せば、過労うつは確実に減らせるし、

精神的に豊かな生活を通じて新たな製品やサービスが産まれる可能性が高くなる。